「不整形地を相続したけど評価額の計算方法が分からない」という方も少なくないでしょう。
不整形地は、整形地に比べ活用しにくいことから価値は減少します。そのため、評価額を算出する際には補正率を用いるなど複雑な計算になりがちです。
この記事では、不整形地の基本から土地の評価方法、評価額の計算方法を分かりやすく解説します。
目次
不整形地とは

土地は形状によって「整形地」と「不整形地」の2種類に分かれます。整形地とは、四角や長方形に整えられた形状の土地です。一方、不整形地は整形地以外のいびつな形をした土地を指します。

不整形地は、形状によってさらに以下の6種類に分かれます。
不整形地の種類 | 特徴 |
---|---|
隅切り地 | 道路と道路の角にあり、さらにその角が斜めに切り取られ道路になっている土地。 |
三角地 | 三角形の土地。建築の際に使用できない部分が大きくなりやすい。 |
L字型(旗竿地) | 間口から細長い土地がのび、その先にまとまった面積がある土地。 |
台形地 | 台形の形になっている土地。過度の角度や辺の長さによって利用価値が異なる。 |
平行四辺形の土地 | 平行四辺形型の土地。三角形などよりは活用しやすい。 |
境界がギザギザになっている土地 | 境界線がギザギザになっている土地。角が多く活用しにくい。 |
境界がギザギザになっている土地・旗竿地・三角地は形がいびつなことから、不整形地というイメージはしやすいでしょう。台形や平行四辺形は整形地のように感じられますが、税金の計算上は不整形地という扱いになるので注意が必要です。
分譲地や区画整理など地形を整えられて販売されている土地は、一般的に整形地です。反対に、それ以外の土地は整えられているように見えても不整形地の扱いになるケースが珍しくありません。とくに、昔からある土地や、一部を分筆してできた土地などは、不整形地になるケースが多いのです。
形状にもよりますが、不整形地の多くは「土地のすべてを活用するのが難しい」「建築に制限がかかる」といったデメリットを抱えています。そのため、整形地に比べて評価額が低くなるのが一般的です。
土地の評価方法

土地の評価方法には、「路線価方式」と「倍率方式」の2種類があります。それぞれ詳しく解説します。
路線価方式
路線価とは、国税庁が定める道路に面する土地1㎡当たりの価額のことです。路線価を用いて評価額を算出する場合は、以下の計算式で算出します。
たとえば、路線価が10万円/㎡、面積100㎡の場合、補正率を考慮しなければ、土地の価格は10万円×100㎡で1,000万円です。
ここに、土地の形状に応じた補正率を乗じて価格を算出します。補正率には、奥行距離に応じた奥行価格補正率や不整形地補正率があり、国税庁のホームページで確認できます。
奥行価格補正率は比較的簡単に把握できますが、不整形地補正率は複雑になりがちなので後ほど詳しく解説します。
なお、路線価方式は、主に市街地にある土地など路線価が定められている土地の評価で用いられる方法です。路線価がいくらかなのかは、国税庁のホームページでチェックできるので調べてみるとよいでしょう。
倍率方式
路線価の定められていない土地については、倍率方式で算出します。倍率方式とは、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて評価額を算出する方法です。
以下の計算式で評価額を算出します。
固定資産税評価額には、土地の形状による補正が加えられているため倍率を乗じるだけで算出できます。倍率についても、路線価と同様に国税庁のホームページでチェックできるので調べてみるとよいでしょう。
不整形補正率とは

前述のとおり、不整形地は整形地と比較して活用しにくいことから評価額が低くなります。その評価額の調整のために用いられるのが、不整形地補正率です。
なお、不整地補正率を用いるのは路線価方式で評価額を算出する場合に限ります。倍率方式で算出する場合は、すでに地形の補正を受けた固定資産税評価額を用いるため、不整形地補正率は使用しません。
路線価方式で算出する場合、最初に不整形地を整形地とみなして評価額を算出します。そこに不整形地補正率を乗じることで不整形地としての評価額を算出するのです。
不整形地補正率の数値は、土地の状態に応じて異なりますが0.60〜1.00の範囲で定められています。いびつな形であるほど低い補正率が適用され、評価額は小さくなることも覚えておきましょう。
不整形補正率の算出に必要な要素の調べ方
不整形地補正率は、国税庁のホームページに掲載されている「不整形補正率表」で調べられます。不整形地補正率表を見る場合、以下の3つの要素から自身の土地に当てはまる補正率を確認します。
- 地区区分
- 地積区分
- かげ地割合
以下で、それぞれ詳しくみていきましょう。
地区区分
地区区分とは、宅地の利用状況に応じて一定地域ごとに定められた地域区分のことです。地区区分には、以下の7つがあります。
- ビル街地区
- 高度商業地区
- 繁華街地区
- 普通商業・併用住宅地区
- 普通住宅地区
- 中小工場地区
- 大工場地区
自身の土地がどの地区に該当するかは、国税庁の「路面価図」でチェックできます。路線価図を見ると、路線価が円やひし形などの形で囲まれているか囲まれていないかの違いがあります。
その囲まれ方の違いが地区区分を示しているので、路線価をチェックする際には地区区分まで確認するようにしましょう。
なお、大工業地区の不整形地については、原則不整形補正を行いません。ただし、土地面積9000㎡程度の土地は中小工場地区の不整形地として補正を行うことも可能です。
地積区分
地積区分は、対象となる土地の面積に応じてA・B・Cの3つに区分され、地区区分に応じて対象の面積は異なります。
地区区分別の地積区分は、以下の通りです。
- ■地積区分表
-
地積区分
地区区分A B C 高度商業地区 1,000㎡未満 1,000㎡以上1,500㎡未満 1,500㎡以上 繁華街地区 450㎡未満 450㎡以上700㎡未満 700㎡以上 普通商業・併用住宅地区 650㎡未満 650㎡以上1,000㎡未満 1,000㎡以上 普通住宅地区 500㎡未満 500㎡以上750㎡未満 750㎡以上 中小工場地区 3,500㎡未満 3,500㎡以上5,000㎡未満 5,000㎡以上
参考:国税庁「地積区分表」
たとえば、普通住宅地区にある200㎡の土地であれば、地積区分は「A」に該当します。
かげ地割合
かげ地とは、想定整形地から不整形地を除いた部分のことです。想定整形地とは、道路に対して垂直な長方形・正方形で不整形地を囲んだ最小限の面積のことを指します。
たとえば、想定整形地の面積が400㎡で不整形地の面積が300㎡なら、かげ地は400㎡-300㎡で100㎡です。
さらに、かげ地が想定整形地に占める割合のことをかげ地割合といいます。上記の場合のかげ地割合は、100㎡÷400㎡で25%となるのです。
かげ地割合は、不整形地が整形地の形状に近いほど小さく、いびつなほど大きくなります。
不整形補正率の算出方法
地区区分・地積区分・かげ地割合が分かれば、それぞれを当てはめることで不整形地補正率が確認できます。
不整形地補正率は、以下の通りです。
地区区分 | 高度商業地区、繁華街地区、普通商業・併用住宅地区、中小工場地区 | 普通住宅地区 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
地積区分 | A | B | C | A | B | C |
かげ地割合 | ||||||
10%以上 | 0.99 | 0.99 | 1.00 | 0.98 | 0.99 | 0.99 |
15%以上 | 0.98 | 0.99 | 0.99 | 0.96 | 0.98 | 0.99 |
20%以上 | 0.97 | 0.98 | 0.99 | 0.94 | 0.97 | 0.98 |
25%以上 | 0.96 | 0.98 | 0.99 | 0.92 | 0.95 | 0.97 |
30%以上 | 0.94 | 0.97 | 0.98 | 0.90 | 0.93 | 0.96 |
35%以上 | 0.92 | 0.95 | 0.98 | 0.88 | 0.91 | 0.94 |
40%以上 | 0.90 | 0.93 | 0.97 | 0.85 | 0.88 | 0.92 |
45%以上 | 0.87 | 0.91 | 0.95 | 0.82 | 0.85 | 0.90 |
50%以上 | 0.84 | 0.89 | 0.93 | 0.79 | 0.82 | 0.87 |
55%以上 | 0.80 | 0.87 | 0.90 | 0.75 | 0.78 | 0.83 |
60%以上 | 0.76 | 0.84 | 0.86 | 0.70 | 0.73 | 0.78 |
65%以上 | 0.70 | 0.75 | 0.80 | 0.60 | 0.65 | 0.70 |
参考:国税庁「不整形地補正率表」
たとえば、以下の条件で不整形地補正率を調べてみましょう。
- 地区区分:普通住宅地区
- 土地面積:300㎡(地積区分A)
- 想定整形地:450㎡
かげ地割合は、(450㎡-300㎡)÷450㎡=約33%なので、「普通住宅地区」「地積区分A」「かげ地割合30%以上」に当てはまる「0.90」が不整形地補正率となります。
その他の補正

不整形地の評価額を算出する場合、不整形地補正率以外にも土地の形状によって以下の2つの補正率で調整するケースがあります。
- 間口狭小補正率
- 奥行長大補正率
間口狭小補正率
間口狭小補正率とは、前面道路に設置している土地(間口)が狭い土地で適用できる補正率です。間口の狭い土地は、使い勝手が悪く建築時にも制限がかかる・建築コストが高くなるなどの理由で資産価値が低下します。
そのため、一定の間口の土地は間口狭小補正率を適用して評価額を調整するのです。普通住宅地区に該当する土地では、間口が8m未満になるとき間口狭小補正率を適用できます。
また、間口狭小補正率は不整形地補正率との併用ができます。その場合、補正率を「不整形地補正率×間口狭小補正率」として調整します。
なお、併用した場合の補正率下限は0.60です。計算の結果0.60未満となっても0.60が適用されるので注意しましょう。
奥行長大補正率
奥行長大補正値とは、間口に対して奥行が極端に長い土地で適用する補正率です。普通住宅地区に該当する土地では、「奥行距離÷間口距離」が2以上の場合補正率を適用できます。
ただし、奥行長大補正率を適用する場合、不整形地補正率との併用はできません。代わりに間口狭小補正率と併せて適用できるため、補正率は「間口狭小補正率×奥行長大補正率」で調整することが可能です。
不整形地の評価方法

ここでは、具体的な不整形地の評価方法を見ていきましょう。
不整形地の評価方法には、以下の4つがあります。
評価方法 | 概要 |
---|---|
整形地に区分して評価する方法 | 不整形地を整形地に分けてそれぞれで評価額を算出し合算後に不整形地補正率で調整する方法。形が比較的整った不整形地で適用できる。 |
計算上の奥行距離を基に評価する方法 | 計算上の奥行距離と間口の距離で計算する方法。どの不整形地でも利用できる比較的シンプルな計算。 |
近似整形地で評価する方法 | 不整形地が整形地だったらと想定して計算する方法。想定整形地とは異なるので注意が必要。 |
差し引き計算をする方法 | 近似整形地と隣接する整形地を合わせた評価額から隣接する整形地の評価額を差し引く方法。他の計算方法に比べて難易度が高い。 |
仮に、4つのうち2つ以上の評価方法を利用できる場合は、結果が有利になる方法を選択することが可能です。税金計算上では評価額が少なくなる方が税負担を軽減できるため、もっとも評価額が低くなる方法を選ぶとよいでしょう。
以下では、それぞれの詳しい評価方法を解説します。
整形地に区分して評価する方法
不整形地の形状が比較的整っており、正方形や長方形に分けられる場合に適用できる評価方法です。
この評価方法では、まず、不整形地を正方形や長方形に分けてそれぞれを整形地として評価額を算出します。整形地であれば、評価額は基本的に「路線価×奥行価格補正率×面積」で計算可能です。なお、奥行価格補正率は、切り分けた後のそれぞれの土地の形状に合わせた補正率を適用します。
それぞれの土地の評価額が算出できれば合算し、最後の不整形地補正率を乗じることで評価額が分かります。
計算上の奥行距離を基に評価する方法
計算上の奥行距離に、実際の間口の距離を乗じて土地の評価額を算出し、さらに不整形地補正で調節する方法です。
計算上の奥行距離とは、「不整形地の面積÷間口の距離」のことを指します。ただし、計算上の奥行距離は想定整形地の奥行距離を超えることはできないので注意しましょう。
たとえば、間口の距離が20m、不整形地の面積300㎡、想定整形地の奥行距離が25mのとき、計算上の奥行距離は300㎡÷20m=15mとなります。
これは想定整形地の奥行距離25m以下であるため、このまま用いることが可能です。この場合、土地の面積を20m×15m=300㎡として土地の評価額を算出します。
ちなみに、普通住宅地区の場合、間口20mでは奥行価格補正率は1.00です。そのため、路線価が10万円のとき補正前の評価額は、10万円×300㎡×1.00=3,000万円となり、この価格に不整形地補正率を乗じることで、不整形地としての評価額が算出できます。
計算上の奥行距離を基にする評価方法は、間口の距離が分かれば計算できるので、適用しやすい評価方法といえるでしょう。
近似整形地で評価する方法
近似整形地とは、不整形地のはみ出ている部分と引っ込んでいる部分を概ね等しく、そしてできるだけ面積を小さくするように囲んだ正方形や長方形のことです。
かげ地を算出する際に利用した「想定整形地」は、不整形地を囲む正方形・長方形です。そのため、想定整形地よりも近似整形地は小さくなります。
近似整形地を求められれば、あとは路線価と奥行価格補正・面積で土地の評価額を算出し、さらに不整形地補正率で調整することで、不整形地としての評価額が算出できます。
差し引き計算をする方法
差し引き計算とは、近似整形地とそれに隣接する整形地を合わせた土地の評価額から、隣接する整形地の評価額を差し引く方法です。差し引いた後の評価額に対して不整形地補正率で調整を行い、不整形地としての評価額を算出します。
類似整形地を求めても旗竿地のようになるといったケースで適用しますが、計算が他の評価方法に比べ複雑なので算出する際には専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
ここまで、不整形地の評価方法や不整形地補正についてお伝えしました。正方形・長方形の土地以外の不整形地は、不整形地補正率を用いて評価額を調整することになります。
適用できる補正率は、地区区分・地積区分・かげ地割合によって異なるので、自身の土地の不整形地補正率やその他適用できる補正率について調べてみるとよいでしょう。
不整形地の評価方法をお伝えしましたが、実際に不整形地を正しく評価することは容易ではありません。不整形地の評価額を知りたい場合は、専門家に相談して算出してもらうことをおすすめします。
ブリリアントでは、旗竿地や狭小地といったさまざまな土地を扱っています。不整形地の評価や活用・売却で悩んでいる方は、ぜひお気軽にご相談ください。