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実家の売却はいつが最適?親が元気なうちか相続後かメリット・デメリットを比較

実家の売却はいつが最適?親が元気なうちか相続後かメリット・デメリットを比較

実家の売却は、親が元気な「生前」に行うか、亡くなった後の「相続後」に行うかで、利用できる税金の特例や手元に残る金額が大きく異なります。この記事では、それぞれのタイミングにおけるメリット・デメリットを徹底比較し、マイホーム…

この記事の監修者
  • 虎ノ門桜法律事務所 / 代表弁護士:伊澤 大輔
    虎ノ門桜法律事務所 / 代表弁護士
    伊澤 大輔
    経歴:
    2001年弁護士登録。虎ノ門桜法律事務所代表弁護士。
    不動産会社(売買、賃貸、仲介、管理、共有物分割、競売等)等、顧問先多数。
    元暴力団追放運動推進都民センター相談委員、同センター不当要求防止責任者講習講師。
  • 宅地建物取引士:杉本 英紀
    宅地建物取引士
    杉本 英紀
    経歴:
    2000年より不動産業に従事。2004年に宅地建物取引士を取得。
    借地権にとどまらず、再建築不可、私道持分なし、道路未接道、事故物件、収益ビル、倉庫、アパート、マンションなど、全ての訳アリ物件に愛された男。
    訳アリ物件のエキスパート、ブリリアント杉本。
    趣味はバイクツーリング。どんな悪路でも物件見に行けます。

目次

実家の売却は、親が元気な「生前」に行うか、亡くなった後の「相続後」に行うかで、利用できる税金の特例や手元に残る金額が大きく異なります。この記事では、それぞれのタイミングにおけるメリット・デメリットを徹底比較し、マイホーム売却時の3,000万円特別控除や小規模宅地等の特例など、知っておくべき節税制度を網羅的に解説します。結論として、最適な時期は親の介護資金の必要性や相続税の課税有無によって変わります。損をせず円満に実家を売却するための判断基準と、具体的な手順を解説します。

実家の売却タイミングを決める重要な判断基準

実家の売却タイミングを決める重要な判断基準

実家を売却するタイミングは、単に「売りたいとき」ではなく、親の健康状態や税制面でのメリット・デメリットを総合的に判断して決める必要があります。「親が元気なうち(生前売却)」か「相続した後(相続後売却)」か、それぞれの状況に応じた最適な選択をするために、まずは判断の軸となる4つの基準を理解しましょう。

親の意思能力と健康状態

不動産の売却契約は、所有者本人に「意思能力」がなければ成立しません。もし親が認知症を発症し、判断能力が不十分とみなされた場合、たとえ家族であっても勝手に実家を売却することはできなくなります。

この場合、家庭裁判所に申し立てて成年後見人を選任する必要がありますが、選任まで数ヶ月の期間を要するほか、親の財産を守ることが優先されるため、必ずしも売却が許可されるとは限りません。そのため、親が元気で意思疎通が明確にできるかどうかが、生前売却を検討する際の最大の前提条件となります。

資金の必要性と使い道

売却によって得た資金を何に使いたいかという目的も、タイミングを決める重要な要素です。

  • 介護費用や老人ホームの入居一時金が必要:
    親自身の老後資金を確保するため、生前売却が適しています。
  • 相続税の納税資金を確保したい:
    相続発生後に現金が必要になるため、あらかじめ現金化しておくか、相続後に売却して換金するかを検討します。

特に、手元の預貯金だけでは介護費用が不足する場合、実家を売却して現金化することは非常に有効な手段となります。

税制優遇の適用条件と節税効果

不動産売却には多額の税金がかかる場合がありますが、売却のタイミングによって利用できる控除制度(特例)が異なります。
どちらの特例を利用するのがトータルで得になるか、シミュレーションが必要です。

【比較表】売却タイミングによる主な税制優遇と注意点
判断基準 生前売却(親が売る) 相続後売却(子が売る)
利用できる主な特例 居住用財産(マイホーム)の3,000万円特別控除 被相続人の居住用財産(空き家)の3,000万円特別控除
相続財産の取得費加算の特例
相続税評価への影響 不利になる可能性あり
(現金は評価額100%のため)
有利になる可能性あり
(小規模宅地等の特例で最大80%減額)
主なメリット 売却益への税金を大幅に圧縮できる 土地の相続税評価額を下げられる

一般的に、売却益(譲渡所得)が大きく出る場合は生前売却の「マイホーム3,000万円控除」の恩恵が大きく、逆に相続税の負担が心配な場合は、不動産のまま相続して「小規模宅地等の特例」を使った方が有利になるケースが多くなります。

詳細な条件については、国税庁のマイホームを売ったときの特例などの公式情報を確認し、税理士等の専門家へ相談することをおすすめします。

建物・土地の状況と維持管理コスト

実家がすでに空き家であるか、将来的に空き家になるリスクがあるかも判断材料です。人が住まなくなった家は急速に老朽化が進み、資産価値が下落します。

また、所有しているだけで毎年固定資産税や都市計画税がかかるほか、庭木の剪定や通風などの維持管理コストも発生します。さらに、管理不全の空き家として自治体から「特定空き家」に指定されると、固定資産税の軽減措置が解除され、税負担が最大6倍になるリスクもあります。

「とりあえず持っておく」という選択が、結果的に資産を減らすことにつながらないよう、維持費と売却価格のバランスを見極めることが大切です。

親が元気なうちに実家を売却する生前売却の特徴

親が元気なうちに実家を売却する生前売却の特徴

実家の売却を検討する際、親が健在なうちに売却活動を行う「生前売却」には、税制優遇や資金計画の面で多くのメリットがあります。一方で、資金の取り扱いや税金面での注意点も存在します。ここでは、親が元気なうちに実家を売却する場合の具体的な特徴や、判断材料となるメリット・デメリットについて詳しく解説します。

マイホーム売却時の3000万円特別控除が使えるメリット

生前売却を行う最大のメリットの一つが、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を利用できる点です。これは、マイホーム(居住用財産)を売却した際に、譲渡所得(売却益)から最高3,000万円までを控除できる制度です。

不動産を売却して利益が出た場合、通常はその利益に対して譲渡所得税と住民税が課税されます。しかし、この特例を適用することで、売却益が3,000万円以下であれば税金がかからず、手元に残る現金を最大化することが可能になります。

相続後に実家を売却する場合でも「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」が存在しますが、昭和56年5月31日以前に建築された家屋であることや、耐震基準を満たす必要があるなど、適用要件が厳しく設定されています。それに比べ、親が居住している、あるいは住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する場合に使える本特例は、築年数の制限がなく、比較的利用しやすいのが特徴です。

詳しくは国税庁の「マイホームを売ったときの特例」ページをご参照ください。

比較項目 生前売却(居住用財産の3000万円控除) 相続後売却(空き家の3000万円控除)
適用対象者 所有者本人(親) 相続人(子など)
築年数要件 制限なし 昭和56年5月31日以前の建築に限る
建物の要件 取り壊し不要(現況有姿で可) 耐震リフォームまたは取り壊しが必要な場合あり
老人ホーム入居後 退去後3年目の年末までなら可 要介護認定などの一定要在件あり

親の老後資金や介護費用を早期に確保できる

不動産は所有しているだけでは現金を生み出しませんが、売却することでまとまった現金資産に変えることができます。親が元気なうちに実家を売却し現金化することは、親自身の老後資金や、将来必要となる有料老人ホームの入居一時金、介護費用を早期に確保できるという大きな安心感につながります。

また、実家を所有し続けることによる維持費の削減も無視できません。人が住んでいない空き家状態になっても、固定資産税や都市計画税は毎年課税され、庭木の剪定や建物の修繕といった管理コストも発生し続けます。早期に売却することで、これらの「負動産」化するリスクを排除し、資産を目減りさせることなく有効活用することが可能になります。

現金化することで相続時の遺産分割がしやすくなる

相続財産の中で最もトラブルになりやすいのが不動産です。不動産は物理的に分割することが難しく、一つの実家を複数の兄弟姉妹で相続する場合、誰が取得するか、あるいは共有名義にするかで揉めるケースが後を絶ちません。

親が元気なうちに実家を売却して現金化しておけば、相続発生時に1円単位で公平に遺産分割を行うことが可能になり、相続トラブル(争族)を未然に防ぐことができます。

特に、主な相続財産が実家のみで、相続人が複数いるようなケースでは、代償分割(不動産を相続した人が他の相続人に現金を支払う方法)のための資金が用意できないといった問題も起こり得ます。生前に現金化しておくことは、円満な相続対策としても非常に有効な手段と言えます。

贈与税の課税対象になるリスクと注意点

生前売却で得た売却代金は、当然ながら所有者である親の財産となります。ここで注意が必要なのは、売却代金を親の口座から子の口座へ安易に移動させたり、子が親の代わりに使ったりすると、贈与税の課税対象になるリスクがあるという点です。

例えば、親の介護費用や生活費を子が立て替えていた分を精算する場合などは問題ありませんが、明確な理由なく資金を移動させると、税務署から「贈与」とみなされ、高額な贈与税が課される可能性があります。年間110万円の基礎控除額を超える資金移動には細心の注意が必要です。

また、実家の名義が親と子の共有になっている場合は、売却代金を持分割合に応じて正確に按分する必要があります。持分を超えて代金を受け取った場合も贈与とみなされます。生前売却を進める際は、売却後の資金管理について家族でしっかりと話し合い、必要に応じて税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

相続後に実家を売却する相続後売却の特徴

相続後に実家を売却する相続後売却の特徴

親が亡くなった後に実家を相続し、その後に売却を行う「相続後売却」は、多くの人が直面するケースです。この方法の最大の特徴は、相続税と譲渡所得税(売却益にかかる税金)の両方を考慮した節税対策が重要になるという点です。

相続発生後は、遺産分割協議や名義変更(相続登記)などの手続きが必要となり、売却までのスケジュールが長期化しやすい傾向にあります。しかし、利用できる税制優遇措置には期限が設けられているものが多いため、適切なタイミングを逃さないよう計画的に進めることが求められます。

小規模宅地等の特例で相続税評価額を下げられる

相続税の計算において、亡くなった親が住んでいた土地(特定居住用宅地等)を配偶者や同居親族が相続する場合、土地の評価額を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」があります。この特例を適用できれば、相続税額を大幅に抑えることが可能です。

しかし、将来的に売却を考えている場合には注意が必要です。配偶者以外の相続人(同居親族や「家なき子特例」適用の別居親族)がこの特例を受けるためには、相続税の申告期限(相続開始から10ヶ月)までその土地を所有し、居住し続けることが要件となっています。

つまり、相続してすぐに売却してしまうと、この80%減額の適用を受けられなくなり、相続税が跳ね上がるリスクがあります。節税効果を最大化するためには、少なくとも相続税の申告期限までは売却を待つ必要があるケースが多いのです。

相続空き家の3000万円特別控除の適用要件

相続によって空き家となった実家を売却した際、売却益(譲渡所得)から最大3,000万円を控除できる特例があります。これを「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」といいます。この特例を利用できれば、譲渡所得税を大幅に軽減、あるいはゼロにすることができます。

この特例を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。

項目 主な適用要件
対象物件 昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された旧耐震基準の家屋(マンション等の区分所有建物は除く)
居住状況 相続開始の直前まで被相続人が1人で住んでいたこと(一定の要件を満たせば老人ホーム入居等の場合も可)
売却期限 相続開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで
売却価格 売却代金が1億円以下であること

以前は、売却前に売主側で建物の解体や耐震リフォームを行う必要がありましたが、2024年(令和6年)1月1日以降の譲渡については要件が緩和されました。売却(引き渡し)の翌年2月15日までに買主が解体や耐震改修を行えば適用が可能となっています。

なお、相続人が3人以上の場合、特別控除額は2,000万円に減額される点にも注意が必要です。詳細は国土交通省の案内をご確認ください。

参考:空き家の発生を抑制するための特例措置 – 国土交通省

相続税の取得費加算の特例を利用した節税効果

相続税を支払った人が、その相続した財産を一定期間内に売却した場合、支払った相続税の一部を売却時の「取得費(経費)」に加算できる「取得費加算の特例」があります。取得費が増えることで譲渡所得(売却益)が圧縮され、結果として所得税・住民税を安くすることができます。

この特例を利用するための主な条件は以下の通りです。

  • 相続や遺贈により財産を取得した人であること
  • その財産を取得した人に相続税が課税されていること
  • 相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日(実質3年10ヶ月以内)までに売却していること

ここで最も重要な注意点は、「空き家の3000万円特別控除」と「取得費加算の特例」は併用できないという点です(選択適用)。どちらの特例を使った方が手元に残るお金が多くなるか、事前にしっかりとシミュレーションを行う必要があります。

参考:No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例 – 国税庁

遺産分割協議が難航し売却活動が遅れるリスク

相続後に実家を売却して現金を分ける方法を「換価分割」といいます。公平に遺産を分けやすい方法ですが、これを実行するには相続人全員の合意と遺産分割協議の成立が不可欠です。

もし遺産分割協議が難航して長引いてしまうと、以下のようなデメリットが生じます。

  • 「相続開始から3年10ヶ月以内」などの特例適用の期限を過ぎてしまい、節税ができなくなる
  • 空き家の期間が長引き、建物の老朽化が進んで資産価値が下がる
  • 売却できるまでの間、固定資産税や維持管理費を払い続けなければならない

特に、売却の意思決定や最低売却価格の設定などで意見が割れると、売却活動自体がスタートできません。相続後売却をスムーズに進めるためには、相続発生前から家族間で意向を共有しておくか、早めに専門家を交えて協議を行うことが重要です。

実家の売却にかかる税金と諸費用のシミュレーション

実家の売却にかかる税金と諸費用のシミュレーション

実家を売却する際、売却価格がそのまま手元に残るわけではありません。売買契約や登記にかかる「諸費用」と、売却によって生じた利益にかかる「税金」を差し引いた金額が、最終的な手取り額となります。

特に、親が長年住んだ実家の場合、購入時の資料が紛失していることも多く、税金の計算において「取得費」の算出方法が手取り額に大きく影響するため注意が必要です。ここでは、具体的な費用の内訳と、ケース別の手取りシミュレーションを解説します。

売却時に必ずかかる諸費用の内訳と目安

不動産売却にかかる諸費用は、一般的に売却価格の4%〜6%程度と言われています。その中でも最も大きな割合を占めるのが不動産会社へ支払う仲介手数料です。

主な諸費用の項目と目安は以下の通りです。

費用の項目 内容と目安金額
仲介手数料 不動産会社への成功報酬。
速算式:(売却価格 × 3% + 6万円)× 消費税
印紙税 売買契約書に貼付する収入印紙代。
売却価格により異なり、1,000万円超5,000万円以下なら1万円(軽減税率適用時)。
登記費用 抵当権抹消登記や住所変更登記が必要な場合にかかる登録免許税と司法書士報酬。
目安:2万円〜5万円程度。
測量費用 土地の境界が確定していない場合に行う確定測量費用。
目安:30万円〜80万円程度(土地の広さや隣地所有者の数による)。
解体費用 古家を解体して更地渡しとする場合にかかる費用。
目安:木造住宅で坪単価4万円〜6万円程度。
遺品整理・処分費 家財道具の撤去費用。
目安:一軒家丸ごとで20万円〜50万円以上かかることも。

特に「測量費用」や「解体費用」は、売却条件によって発生するかどうかが変わります。まずは現状有姿(そのままの状態)で売れるのか、更地にする必要があるのかを不動産会社と相談することが重要です。

実家売却にかかる税金(譲渡所得税)の計算方法

実家を売却して利益が出た場合、その利益に対して「譲渡所得税(所得税+住民税)」が課税されます。この税金は売却価格そのものにかかるのではなく、売却価格から「取得費」と「譲渡費用」を差し引いた利益(譲渡所得)に対してかかります。

計算式は以下の通りです。

譲渡所得 = 売却価格 - (取得費 + 譲渡費用) - 特例控除額

  • 取得費:その土地や建物を購入した時の代金や購入手数料など。
  • 譲渡費用:売却時にかかった仲介手数料、印紙税、解体費用など。
  • 特例控除額:「居住用財産(マイホーム)の3,000万円特別控除」や「相続空き家の3,000万円特別控除」など。

ここで問題となるのが、親が購入した当時の契約書が見つからず、取得費が不明なケースです。この場合、「概算取得費」として「売却価格の5%」を取得費とみなして計算します。取得費が低く見積もられるため、計算上の利益(譲渡所得)が大きくなり、税金が高額になるリスクがあります。

所有期間による税率の違い(長期譲渡所得と短期譲渡所得)

算出された譲渡所得にかかる税率は、その不動産を所有していた期間によって異なります。相続した実家の場合、親が所有していた期間を引き継ぐことができます。

親が購入してから売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば「長期譲渡所得」となり、税率が低く抑えられます。

区分 所有期間 税率(所得税+住民税+復興特別所得税)
長期譲渡所得 5年超 20.315%
(所得税15.315% + 住民税5%)
短期譲渡所得 5年以下 39.63%
(所得税30.63% + 住民税9%)

実家の売却では、ほとんどのケースで長期譲渡所得が適用されますが、相続発生直後に売却する場合などは念のため所有期間を確認しておきましょう。詳細は国税庁の情報を参照してください。

No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)|国税庁

【ケース別】手取り額のシミュレーション

それでは、実際に「売却価格3,000万円」の実家を売却した場合の税金と手取り額をシミュレーションしてみましょう。ここでは、取得費が不明(概算取得費5%適用)な古い実家を想定し、特例を使った場合と使わなかった場合を比較します。

ケース1:相続空き家の3,000万円特別控除を適用できた場合

一定の要件を満たし、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例を利用できたケースです。

  • 売却価格:3,000万円
  • 取得費(5%):150万円(3,000万円 × 5%)
  • 譲渡費用:約105万円(仲介手数料など)
  • 譲渡所得(控除前):2,745万円(3,000万円 - 150万円 - 105万円)
  • 特別控除:▲3,000万円
  • 課税譲渡所得:0円
  • 税金:0円

この場合、税金はかからず、諸費用を引いた約2,895万円が手取りとなります。

ケース2:特例が適用できず、取得費も不明な場合

特例の要件を満たせず、さらに購入時の資料もないため概算取得費(5%)で計算するケースです。

  • 売却価格:3,000万円
  • 取得費(5%):150万円
  • 譲渡費用:約105万円
  • 課税譲渡所得:2,745万円
  • 税金(20.315%):約557万円

この場合、手取り額は諸費用と税金を引いて約2,338万円となります。

このように、同じ価格で売却しても、特例が使えるかどうかで手取り額に約500万円以上の差が出ることがあります。実家の売却においては、単に高く売ることだけでなく、税制優遇を確実に受けるための準備がいかに重要かがわかります。

認知症対策として検討すべき家族信託と成年後見制度

認知症対策として検討すべき家族信託と成年後見制度

実家の売却を検討する際、最も警戒しなければならないリスクの一つが、所有者である親の認知症です。不動産の売買契約は法的な法律行為であり、所有者に「意思能力」があることが大前提となります。

もし親が認知症を発症し、意思能力がないと判断されてしまうと、実家の資産は事実上の「凍結」状態となり、売却はおろか大規模な修繕や賃貸契約さえもできなくなります。このような事態に備え、あるいは直面してしまった場合の解決策として、「成年後見制度」と「家族信託」という2つの法的制度について正しく理解しておく必要があります。

認知症で意思能力を喪失すると不動産売却ができなくなる理由

不動産の売却には、売買契約の締結、所有権移転登記の申請など、本人の明確な意思確認が必要な手続きが含まれます。司法書士などの専門家は、本人に面会して「売る意思があるか」「契約内容を理解しているか」を厳格に確認します。

この際、重度の認知症などで意思能力が欠けていると判断されれば、契約行為は無効となります。たとえ子供が実印や権利証を管理していたとしても、親の代理として勝手に不動産を売却することは法律上認められていません。そのため、対策を講じないまま認知症が進行すると、親が亡くなって相続が発生するまで、実家を塩漬けにせざるを得ない状況に陥ってしまいます。

成年後見制度を利用して実家を売却する流れと注意点

すでに親の認知症が進行し、意思能力が失われている場合に利用できる唯一の公的な制度が「成年後見制度」です。これは家庭裁判所によって選任された「成年後見人」が、本人の代わりに財産管理や身上監護を行う制度です。

居住用不動産の処分には家庭裁判所の許可が必要

成年後見制度を利用すれば、後見人が代理となって実家を売却することは物理的に可能です。しかし、実家が「居住用不動産」に該当する場合、売却には家庭裁判所の許可が別途必要になるという非常に高いハードルがあります。

成年後見制度の本来の目的は「本人の財産を守ること」です。「介護費用が足りないため、売却代金を充てる必要がある」といった合理的な理由がない限り、単に「空き家になるから」「相続対策で現金化したい」という理由では、裁判所は売却を許可しません。また、一度後見人が選任されると、原則として親が亡くなるまで制度の利用は続き、司法書士や弁護士などの専門家が後見人についた場合は、月額数万円の報酬を払い続ける必要があります。

制度の詳細は法務省:成年後見制度~成年後見登記制度~などの公的機関の情報を参照してください。

家族信託(民事信託)を活用して柔軟に売却する仕組み

親がまだ元気で、意思能力がはっきりしている段階であれば、「家族信託」が非常に有効な対策となります。家族信託とは、親(委託者)が自分の財産管理を信頼できる家族(受託者)に託す契約のことです。

あらかじめ信託契約の中で「実家の管理・処分権限」を子供に移しておけば、将来親が認知症になったとしても、子供の判断と署名捺印だけで実家を売却することが可能になります。

家族信託のメリットと組成のタイミング

家族信託の最大のメリットは、成年後見制度のような家庭裁判所の関与や厳格な制約を受けず、家族間で決めた目的に沿って柔軟に資産運用や処分ができる点です。売却代金も信託財産として管理されるため、親の介護費用や生活費としてスムーズに活用できます。

ただし、家族信託契約は「契約行為」であるため、親が認知症を発症して判断能力を失った後では契約を結ぶことができません。あくまで親が元気なうちに組成しなければならない「予防策」であることを理解しておきましょう。

成年後見制度と家族信託の違い【比較表】

実家の売却を見据えた場合、これら2つの制度には費用や柔軟性に大きな違いがあります。それぞれの特徴を整理しました。

比較項目 成年後見制度(法定後見) 家族信託
利用開始のタイミング 認知症発症 認知症発症(元気なうち)
制度の主な目的 本人の財産保護・身上監護 資産の管理・承継・活用
実家売却の難易度 困難
(家庭裁判所の許可が必要)
容易
(受託者の判断で売却可能)
初期費用 約10万円〜(鑑定費用等含む) 約30万円〜(専門家報酬・登記等)
ランニングコスト 専門家後見人の場合、月額2〜6万円 原則不要(家族が管理するため)

どちらを選ぶべきか?状況別の判断ポイント

実家の売却をスムーズに進めるためには、現在の親の健康状態に合わせて適切な手段を選ぶ必要があります。

  • 親がまだ元気な場合:
    将来の売却の自由度を確保するために、家族信託の組成を優先的に検討すべきです。初期費用はかかりますが、売却時のスムーズさや相続対策としての柔軟性は成年後見制度より優れています。
  • 親に軽度の物忘れがある場合:
    意思能力の有無が微妙なラインであれば、早急に専門家(司法書士や弁護士)へ相談し、家族信託や任意後見契約が可能か診断を受けることをお勧めします。
  • すでに重度の認知症の場合:
    残念ながら家族信託は利用できません。実家を売却して現金化する必要性が高い(介護費用が不足している等)場合は、成年後見制度の申し立てを行い、家庭裁判所の許可を得て売却する道を探ることになります。

実家を少しでも高く売却するために行うべき準備

実家を少しでも高く売却するために行うべき準備

実家の売却において、単に「売りに出す」だけでは、相場よりも安く買い叩かれてしまったり、買い手がなかなか見つからなかったりするリスクがあります。築年数が経過した実家を少しでも高く、そしてスムーズに売却するためには、事前の戦略的な準備が不可欠です。

ここでは、不動産会社への査定依頼から、物件の価値を高めるための具体的なアクションまで、売主として押さえておくべきポイントを解説します。

複数の不動産会社に査定を依頼して適正相場を把握する

実家を高く売るための第一歩は、適正な相場価格を知ることです。1社だけの査定で決めてしまうと、その価格が適正なのか、あるいは安すぎるのかを判断することができません。必ず3社以上の不動産会社に査定を依頼し、価格と提案内容を比較するようにしましょう。

机上査定と訪問査定の違いを使い分ける

不動産の査定には、大きく分けて「机上査定(簡易査定)」と「訪問査定(実査定)」の2種類があります。売却の検討段階に合わせてこれらを使い分けることが効率的です。

査定の種類 特徴とメリット デメリット 推奨されるタイミング
机上査定
(簡易査定)
過去の取引事例や市場データをもとに概算価格を算出する。立会い不要でスピーディーに結果がわかる。 個別の物件状態(リフォーム歴や劣化状況)が反映されないため、実際の売却価格と乖離する可能性がある。 「まずは大まかな相場を知りたい」という検討初期段階。
訪問査定
(実査定)
担当者が現地を訪問し、建物の状態、日当たり、周辺環境などを詳細に調査して算出する。精度の高い価格がわかる。 現地調査への立会いが必要で、結果が出るまでに数日かかる場合がある。 「具体的に売却を進めたい」「正確な売り出し価格を決めたい」という段階。

査定額の根拠を確認して信頼できるパートナーを選ぶ

査定額が高い会社が必ずしも「良い会社」とは限りません。中には、契約を取りたいがために、相場とかけ離れた高い査定額を提示してくる業者も存在します。

重要なのは、「なぜその価格になったのか」という根拠を明確に説明できるかどうかです。近隣の成約事例や、現在の市場動向に基づいた論理的な説明ができる担当者を選ぶことが、結果として高値売却への近道となります。

売却前のリフォームや解体は慎重に判断する

「古い家だからリフォームしないと売れない」「更地にしたほうが買い手がつく」と考えがちですが、自己判断での先行投資は裏目に出ることがあります。

フルリフォームよりもハウスクリーニングが費用対効果が高い

中古住宅市場では、購入後に自分好みのリフォームやリノベーションを行いたいと考える買主が増えています。そのため、売主の好みで高額なリフォームを行っても、その費用分を売却価格に上乗せして回収できるとは限りません。

むしろ、数万円から十数万円程度で実施できるプロによるハウスクリーニングを行い、清潔感をアピールするほうが費用対効果が高いケースが多く見られます。特に水回り(キッチン、浴室、トイレ)の汚れや臭いは内覧時の印象を大きく左右するため、念入りな清掃が推奨されます。

解体して更地にするメリットとデメリット

実家が「古家付き土地」として売れるのか、「更地」にすべきかは、建物の状態やエリアの需要によります。解体には100万円単位の費用がかかる上、固定資産税の特例が外れるリスクもあるため注意が必要です。

売却方法 メリット デメリット・注意点
古家付き土地として売却 解体費用を負担しなくて済む。
買主がリノベーション素材として検討できる。
固定資産税の住宅用地特例が維持される。
建物の劣化が激しいと「廃墟」という印象を与え、解体費用分以上の値引きを要求される場合がある。
更地にして売却 買主がすぐに新築工事に着手できるため、土地を探している層にアピールしやすい。
地中埋設物などのリスクを事前に確認できる。
解体費用が先行投資として必要になる。
売れるまでの期間、固定資産税が最大6倍(本来の税率)に戻る可能性がある。

境界確定測量とインスペクションで安心価値を付加する

不動産取引において「安心感」は大きな付加価値となり、価格交渉を有利に進める材料になります。特に権利関係と建物の品質に関する情報は、契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)のトラブル回避にも繋がります。

隣地との境界トラブルは売却価格を下げる要因になる

古い戸建て住宅の場合、隣地との境界線が曖昧なままになっているケースが少なくありません。境界が確定していない土地は、将来的なトラブルを懸念して敬遠されたり、大幅な値引き交渉の材料にされたりします。

売却活動を始める前、あるいは売買契約締結までに、土地家屋調査士に依頼して「境界確定測量」を行い、隣地所有者との境界確認書を取り交わしておくことが、高値売却の必須条件と言えます。

建物状況調査(インスペクション)で品質を証明する

建物状況調査(インスペクション)とは、国土交通省の定める講習を修了した建築士が、建物の基礎や外壁等のひび割れ、雨漏りなどの劣化状況を目視や計測等により調査するものです。

インスペクション済み物件として売り出すことで、買主の「購入後の欠陥リスク」に対する不安を払拭でき、競合物件との差別化が図れます。結果として、強気の価格設定でも成約に結びつきやすくなります。

参考:既存住宅インスペクション・ガイドライン – 国土交通省

残置物の撤去と遺品整理を済ませておく

実家の売却で最も敬遠されるのが、家具や家財道具がそのまま残された状態での内覧です。生活感が強すぎたり、物が散乱していたりすると、部屋が狭く見えるだけでなく、管理が行き届いていない印象を与えてしまいます。

生活感を消すことで内覧時の印象をアップさせる

内覧に来る購入検討者は、その家での新しい生活をイメージしながら見学します。親の遺品や古い家具が残っていると、そのイメージを阻害してしまいます。

売却活動を本格化させる前に、原則として室内を空っぽの状態(空室渡し)にすることを目指してください。どうしても居住中に売却活動を行う必要がある場合でも、不要な荷物はトランクルームに預けるなどして、床面積を広く見せる工夫が必要です。すっきりとした空間は、物件のポテンシャルを最大限に伝え、早期・高値売却の可能性を高めます。

まとめ

実家の売却はいつが最適?親が元気なうちか相続後かメリット・デメリットを比較

実家の売却は、親が元気なうちに行う「生前売却」と亡くなった後の「相続後売却」のどちらが最適か、家族の状況や資産背景により異なります。生前売却なら「居住用財産を売ったときの3,000万円の特別控除」を活用し、早期の現金化で介護費用等に充てられる点が大きなメリットです。

対して相続後は、「小規模宅地等の特例」で相続税評価額を下げたり、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの3,000万円の特別控除」で節税を図ることが可能です。損をしないためには、まず不動産会社に査定を依頼して市場価値を把握し、税理士等の専門家を交えて税金や手取り額のシミュレーションを行うことが重要です。

訳あり物件買取センターの不動産買取の専門家に相談することで、これらの複雑な手続きやトラブルをスムーズに解決し、安心して資産を管理・処分することができます。

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