高齢化や少子化の進行により、所有者が亡くなっても相続人がいない空き家が増えています。
手入れされずに放置された住宅は、老朽化による倒壊リスクや近隣トラブルの原因にもなりかねません。中には、「相続人がいない場合、誰が責任を負うのか」「税金は発生するのか」と疑問を抱く方も多いでしょう。
この記事では、相続人がいない空き家の扱い方や管理責任、税金の有無、そしてトラブルを避けるための具体的な対処法をわかりやすく紹介します。
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虎ノ門桜法律事務所 / 代表弁護士伊澤 大輔経歴:
2001年弁護士登録。虎ノ門桜法律事務所代表弁護士。
不動産会社(売買、賃貸、仲介、管理、共有物分割、競売等)等、顧問先多数。
元暴力団追放運動推進都民センター相談委員、同センター不当要求防止責任者講習講師。 -
宅地建物取引士鈴木 成三郎経歴:
2013年より不動産業に従事。2019年に宅地建物取引士を取得。
借地権のスペシャリスト。
借地権にとどまらず、事故物件、収益ビル、倉庫、アパート等、各種不動産売買に精通している。
趣味は仕事。年間取引数は70件に及ぶ。
目次
相続人がいない空き家のパターン
空き家の所有者が亡くなっても、必ずしも相続人が存在するとは限りません。
ここでは、相続人がいないとみなされる主なケースを5つに分けて解説します。
法定相続人がいない
被相続人に配偶者や子どもがなく、さらに両親や兄弟姉妹、甥や姪といった親族もすでに亡くなっている場合、法定相続人がいないと判断されます。
これは、相続関係が完全に途絶えた状態を指し、一般的な相続手続きでは誰も財産を引き継がないケースです。空き家がこの状態になると、所有者の権利を継ぐ人がいないため、管理や処分を任せる人も存在しません。
そのため、家庭裁判所が「相続財産清算人」を選任し、建物や土地の維持、売却、清算を行うことになります。
最終的に関係者からの申立てがなければ、財産は国に帰属します。
相続人が全員相続登記した
相続人全員が遺産分割を終えて空き家の相続登記を済ませた場合でも、その後の管理が放置されると、事実上の管理不在空き家になることがあります。
相続登記は所有権の承継を正式に確認する手続きであり、これを行うことで相続人それぞれの権利関係が明確になります。
しかし、相続登記を完了した時点で役割を終えたと誤解し、維持管理や売却などの対応を先延ばしにするケースも少なくありません。その結果、相続人が高齢化や死亡により実質的に管理する人がいなくなると、誰も対応しない空き家となり、結果的に行き場を失うリスクがあります。
登記を完了して終わりではなく、今後の管理責任を誰が担うのかを明確にしておくことが重要です。
相続欠格または相続廃除になった
相続欠格や相続廃除とは、本来は相続権を持つ人が、法律上その資格を失う、または被相続人の意思によって排除されることを指します。
主な内容は次のとおりです。
- 相続欠格:被相続人の殺害、遺言書の偽造・破棄など、重大な不正行為を行った場合に、法律上自動的に相続権を失う制度。
- 相続廃除:生前に虐待や侮辱などがあった際、被相続人が家庭裁判所に申立てを行い、その判断によって相続人の資格を失わせる制度。
こうした理由で相続権を持つ人が全員排除されると、結果的に相続人がいない状態となります。
その結果、財産の管理主体が不在となり、登記や税金の支払い、老朽化への対応が滞るおそれがあります。
特別縁故者はいるものの遺言書がない
被相続人に血縁のある法定相続人がいなくても、生前に介護や生活支援をしていた知人、事実婚のパートナーなど「特別縁故者」と呼ばれる人がいる場合があります。
しかし、遺言書で財産の譲渡先が指定されていない限り、これらの特別縁故者が自動的に財産を相続することはできません。相続人がいないまま死亡すると、家庭裁判所によって相続財産清算人が選任され、一定期間後に特別縁故者が申立てを行えば、裁判所の判断で一部の財産が分与される仕組みです。
つまり、特別縁故者がいても遺言書がなければ、遺産を確実に引き継ぐことは難しいのが現状です。
相続人と連絡が取れない
相続人が存在しても、所在がわからず連絡が取れない場合、実質的には相続人がいない状態に近いと考えられます。
長年音信不通になっている、海外に移住して連絡手段がないなどの事情があると、遺産分割や空き家の管理が進まず、放置されるケースが多いです。
なお、このような場合、家庭裁判所に申立てることで「不在者財産管理人」を選任し、代わりに財産の管理・処分を行うことが可能です。
相続人がいない空き家の扱いと注意点
相続人がいない空き家は、すぐに国のものになるわけではなく、一定の手続きや管理期間が必要です。
ここでは、空き家がどのように扱われ、どのような点に注意すべきかを解説します。
一定期間は保存義務が残る
相続人がいない場合でも、空き家はすぐに処分されず、一定期間は保存義務が残ります。
これは、家庭裁判所が相続財産清算人を選任し、債権者や特別縁故者からの申立てを受けるまでの間、財産を保全するための仕組みです。この期間中、建物の損傷や倒壊などを防ぐため、最低限の維持管理が行われます。
相続財産清算人は修繕や補修など必要な措置を取りながら、空き家がさらに劣化しないように管理する責任を負います。
こうした保存措置は、財産の価値が失われるのを防ぐことも目的です。
固定資産税が発生する
相続人がいない場合でも、空き家には固定資産税が発生します。
これは、建物や土地が存在する限り課税対象になるためです。
相続登記が行われていなかったり、管理者がいない場合は、納税通知書の送付先が不明となり、税金が未納扱いになることがあります。この状態が続くと、延滞金の発生や差押えの対象となる可能性もあるため注意が必要です。
また、倒壊の危険があるなど「特定空家」に指定されると、住宅用地特例による税の軽減措置が解除され、固定資産税が増額されることもあります。
相続人がいない空き家は、税負担の所在が曖昧になりやすいため、早期に家庭裁判所や自治体へ連絡し、管理や納付に関する方針を明確にしておくことが重要です。
最終的には国に帰属する
相続人がいない空き家は、最終的に国の財産として引き継がれます。
国に帰属するまでには、次のような流れで手続きが進みます。
| ステップ | 詳細 |
|---|---|
| 1. 相続人がいないことの確定 | 戸籍調査などで法定相続人や代襲相続人がいないことを確認。 |
| 2. 相続財産清算人の選任 | 家庭裁判所に申立てて、相続財産清算人を選任。 |
| 3. 債権者・特別縁故者への対応 | 官報公告などで債権者や特別縁故者を募り、申立てがあれば弁済や分与を行う。 |
| 4. 残余財産の確定 | 清算・分配が完了し、残った財産を整理して国庫帰属の対象を確定。 |
| 5. 国庫への帰属 | 家庭裁判所の手続を経て、残余財産が国庫に納められ、国が管理・処分。 |
このように、相続人がいない空き家は、法律に基づく手続きを経て国が管理・処分します。
国庫に帰属することで、所有者のいない状態が法的に整理され、社会全体で財産の管理が行われます。
空き家トラブルは損害賠償請求に発展するケースがある
相続人がいない空き家が放置されると、次のようなトラブルが発生し、損害賠償請求に発展する可能性があります。
- 屋根や壁の崩落により、隣家の建物や車が損壊した
- 倒壊した塀や木が通行人に危害を加えた
- 雑草やゴミの繁茂で害虫・害獣が発生し、近隣住民に被害が及んだ
- 不審者や放火などの犯罪行為が空き家で発生し、周辺住民が被害を受けた
こうしたトラブルは、被害を受けた住民から損害賠償請求に発展するケースも少なくありません。管理責任が曖昧な状態でも、相続財産清算人や自治体が管理不備と判断した場合、法的対応を求められる可能性があります。
空き家は安全確保のためにも、早期に適切な管理や処分を進めることが重要です。
空き家を相続する際の対処法と流れ
相続人がいない空き家は、適切な手続きを踏まないとトラブルの原因になります。
ここでは、相続人がいない場合の具体的な対処法と流れを紹介します。
相続人がいないことを調査する
相続人がいない空き家を適切に処理するには、まず「本当に相続人がいない」ことを正確に調査する必要があります。
戸籍謄本や除籍謄本を取得し、被相続人の出生から死亡までの戸籍関係を追跡します。
配偶者、子ども、両親、兄弟姉妹、甥や姪といった法定相続人がいるかを確認し、さらに代襲相続の可能性も検討しましょう。調査が不十分だと、後から相続人が現れてトラブルになるため、丁寧に確認することが重要です。
必要に応じて、弁護士や司法書士などの専門家に相談しながら、調査を進めるのが一般的です。
相続放棄者など関係者に連絡をする
相続人がいるものの、相続を放棄している場合や連絡が取れない場合でも、財産整理を進めるためには、まず関係者全員の相続意思と所在を明確にすることが不可欠です。
相続放棄は、家庭裁判所へ届出をして初めて法的な効力を持つため、単なる口頭の意思表示では不十分です。連絡が取れない相続人については、戸籍や住民票などの公的記録をたどって可能な限り居場所を確認します。
これらの手続きにより、「誰も相続しない状態」を法的に確定させることができ、相続財産清算人の選任や清算手続きを進められます。
相続財産清算人を選任する
相続人がいないことが確定したら、家庭裁判所に「相続財産清算人」の選任を申立てます。
相続財産清算人とは、相続人がいない場合や相続人の不在が続く場合に、家庭裁判所が選任する財産管理の専門家です。
選任の流れは以下の通りです。
- 申立て:利害関係人や検察官が家庭裁判所に清算人の選任を申し出る。
- 選任:裁判所が弁護士や司法書士などの適任者を清算人として選任する。
- 清算業務:清算人は空き家の管理、売却、債権者や特別縁故者への対応、財産の清算を行う。
- 報告・終了:清算が完了したら、裁判所に報告し、残余財産が国庫に帰属する。
相続財産清算人が選任されると、空き家を含む財産の管理や処分が法的に進められ、トラブル回避や適切な処理が可能になります。
相続人がいない空き家で事前に対処できる方法
相続人がいない空き家を放置せず、トラブルを未然に防ぐためには、生前から対策を講じることが大切です。
ここでは、事前にできる具体的な対処法を紹介します。
遺言書の作成
遺言書を作成することで、誰に空き家を相続させるか、どのように処分するかを明確にできます。
法定相続人がいない場合でも、知人や友人、団体など特定の相手を指定できるため、空き家の管理や処分がスムーズです。また、遺言書があれば、相続財産清算人の選任や国庫帰属の手続きを避けられるほか、近隣トラブルや税金の未納リスクも軽減できます。
生前に対策を講じることで、本人の意思が尊重された形で空き家の処理が進められます。
生前に贈与する
生前に信頼できる人に空き家を贈与することで、所有者が亡くなった後の管理問題を未然に防げます。
相続手続きが不要になることで、相続人がいない場合のトラブルや固定資産税の未納リスクを回避できます。ただし、贈与税が発生する場合があるため、税制面の確認も必要です。
また、贈与は登記手続きや贈与契約書の作成なども必要ですが、事前に手続きを済ませておくことで、本人の意思に沿った管理や処分が可能になります。
贈与を受けた相手が適切に管理・維持することで、近隣トラブルや老朽化のリスクも軽減できます。
生前に売却する
生前に空き家を売却しておくことで、所有者が亡くなった後の管理や税金の問題を解消できます。
売却によって財産が移転するため、相続人がいない状態で空き家が放置されるリスクがなくなります。また、売却益は相続財産とはみなされないため、相続税や固定資産税の負担が軽減されることもメリットです。
売却時期や価格の見極めが重要ですが、早めに検討することで、近隣トラブルや老朽化による倒壊リスクも回避できます。
売却は、空き家問題を根本的に解決する有効な手段です。
まとめ
相続人がいない空き家は、放置すると老朽化や近隣トラブル、税金未納などのリスクが高まります。
相続人がいないパターンは、相続登記済みでも管理が放置されたケース、相続欠格・廃除、特別縁故者がいるが遺言書がない場合などさまざまです。
どの場合でも、家庭裁判所による相続財産清算人の選任や国庫帰属の手続きを経ることで、法的に整理できます。トラブル回避や税金の負担軽減のためにも早期の対応が不可欠です。
相続人がいない空き家でお悩みの方は、専門業者に相談するのも一つの方法です。
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早期解決で、面倒な手続きや税金の負担を回避できますので、まずはお気軽にご相談ください。