相続した借地権を売却したいと考えている方に向け、本記事ではその具体的な方法や流れを分かりやすく解説します。
地主の承諾が必要なケースや第三者への売却方法、さらには相続時に発生しやすいトラブル事例についても紹介しています。
相続した借地権をスムーズに売却したい方や、売却のプロセスで安心を得たい方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
借地権は財産として相続される

借地権とは、他人の土地を借りて建物を所有するための権利です。この権利により、土地の所有者(地主)から土地を借り受け、その上に建物を建てたり、既存の建物を所有したりすることができます。借地権は法律で定められた権利であり、一定期間にわたり土地を使用することが保証されています。
借地権は不動産に関わる重要な財産権であり、所有者が亡くなった場合には、相続の対象となります。例えば、親が所有していた建物が借地上に建てられていた場合、その親が亡くなり相続が発生すると、その借地権も自動的に相続人に引き継がれます。このため、相続人はその借地権を継続して利用するか、売却などの手続きを進めることが可能です。
相続人は借地権を放棄することもできますが、この場合、借地権のみならず、他の財産もすべて放棄する必要があります。したがって、相続を放棄する際には、他にプラスの財産がないか、放棄しても問題がないかを相続人同士で十分に話し合うことが重要です。放棄する前に、全体の財産状況を確認し、慎重に判断することが求められます。
借地権の相続には地主の承諾は不要
借地権は、地主から土地を借りる際に成立する権利ですが、通常、土地の使用や変更に関しては地主の許可が必要なケースが多いです。
しかし、借地権の相続に関しては特別な許可を必要とせず、相続人に自動的に引き継がれることになります。これは、相続が法律によって認められた権利の承継であり、地主がこれに対して反対することができないためです。
借地権の相続手続きは、以下のような基本的な流れで進められます。
- 相続人の確定
遺言書の有無や法定相続人の確認を行い、借地権を誰が相続するかを決定します。 - 相続財産の評価
相続する借地権の評価を行い、他の財産とともに相続税の計算に使用します。 - 相続手続きの実施
遺産分割協議などを通じて相続人の間で財産を分割し、借地権の名義変更や関連手続きを行います。 - 名義変更の手続き
借地権を相続した場合、役所や法務局で名義変更の手続きを行います。この際、地主の許可は必要ありませんが、通知することが望ましいです。
このように、相続においては地主の許可を得る必要がないため、手続きがスムーズに進むことが特徴です。ただし、借地権を売却する場合や第三者に譲渡する際には、別途地主の承諾が必要となるため、その点には注意が必要です。
遺言による相続人以外への譲渡には地主の承諾が必要
遺言により、借地権を相続人ではなく第三者に譲渡する場合には、地主の承諾が必要となります。これは、借地権が土地の使用権を伴うため、地主としても土地の使用者が変わることに対して同意を求める権利があるためです。したがって、相続人以外に借地権を譲渡する際には、遺言執行者が地主に対して承諾を得る手続きを行う必要があります。
- 基本的な相続の流れ
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- 遺言書の確認と相続人の確定
遺言書に記載された内容に基づいて、相続人や受遺者(相続人以外の譲受人)を確認し、借地権の譲渡先を特定します。 - 地主への通知と承諾の取得
相続人以外に借地権を譲渡する旨を地主に通知し、その承諾を得ます。この段階では、地主が譲渡に対して同意しない場合、譲渡が成立しない可能性があります。 - 遺産分割協議または遺言執行
必要に応じて、遺産分割協議を行い、借地権を含む財産の分割を決定します。その後、遺言の内容に従って譲渡手続きを進めます。 - 名義変更の手続き
地主の承諾を得た後、法務局で名義変更の手続きを行い、新たな受遺者に借地権を正式に譲渡します。
- 遺言書の確認と相続人の確定
このように、相続人以外への借地権の譲渡には、地主の承諾が重要なステップとなります。地主の同意を得るための手続きがスムーズに進むよう、事前に関係者との十分なコミュニケーションが求められます。
相続した借地権の売却は地主の承諾が必要
相続した借地権がある建物に住む予定がない場合、多くの人は地代や固定資産税の支払い負担を考慮し、売却を検討します。維持費用が重くのしかかるため、特に居住しない建物を持ち続けるメリットが少ないと感じるケースが多いからです。
相続した借地権は売却することが可能ですが、売却には地主の許可が必要です。借地権は土地の利用権を伴うため、地主がその利用者の変更に同意しなければ売却手続きは進められません。このため、売却を検討する際にはまず地主との交渉が不可欠です。
借地権付きの建物を売却する際には、通常の不動産売却とは異なる制約が存在します。例えば、地主の承諾が得られなければ売却できないことや、承諾料の支払いが必要な場合もあります。そのため、売却方法や重要なポイントを事前に把握し、適切な対応をすることが実現への鍵となります。専門家のアドバイスを受けながら、計画的に進めることが重要です。
相続した借地権を売却する方法

相続した借地権を売却する方法にはいくつかの選択肢があります。例えば、地主に買い取ってもらう方法、第三者に売却する方法、等価交換を行って売却する方法などがあります。それぞれの方法には異なる特徴とメリット・デメリットがありますので、状況に応じた最適な選択が求められます。
どの方法を選ぶにしても、借地権を売却するためには地主の承諾が必要です。これは、借地権が土地の利用権に関わるため、地主が利用者の変更に同意しなければ売却手続きを進めることができないためです。したがって、売却を検討する際にはまず地主と十分な協議を行い、承諾を得ることが第一歩となります。
万が一、地主が売却に同意しない場合には、裁判所から売却許可を得る「借地非訟」という手続きが利用できる場合があります。しかし、この手続きには費用がかかり、また地主との関係が悪化するリスクも伴います。そのため、慎重に判断し、可能な限り地主と合意を目指すことが望ましいです。
借地権を売却する方法には、以下のようなものがあります。
- 【借地権を売却する方法】
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- 地主に買い取ってもらう
- 第三者に売却する
- 等価交換を行い第三者に売却する
- 地主の底地権と合わせて第三者に売却する
- 専門業者に買い取ってもらう
これらの方法の中から、自分に最も適したものを選び、地主の承諾を得た上で売却手続きを進めることが大切です。具体的に下記にて説明していきます。
地主に買い取ってもらう
地主に借地権を買い取ってもらう方法は、比較的簡単で手続きがスムーズに進むことが特徴です。地主は既に土地の所有者であるため、借地権を買い取ることで土地と建物を一体として管理できるようになります。この方法のメリットは、交渉が簡単で、買い手を探す手間がかからない点です。
また、手続きも早く進行する傾向があります。しかし、デメリットとしては、地主が価格交渉で優位に立つことが多く、市場価格より低く売却される可能性がある点が挙げられます。この方法を成功させるには、地主との信頼関係を維持しつつ、適切な査定額を提示して、双方が納得できる条件を見つけることが重要です。
さらに、地主に買い取ってもらう以外の選択肢として、借地権を無償で返還することも可能ですが、その際には建物を解体し、更地にして返す必要があるため、解体費用が発生します。このコストも考慮して判断することが求められます。
第三者に売却する
第三者に借地権を売却する方法は、市場に出して買い手を見つける一般的な不動産売却の手法です。この方法の特徴は、広く買い手を募集できるため、高額で売れる可能性がある点です。市場に出すことで、より高い価格での売却が期待でき、複数の買い手から選ぶことが可能になります。
しかし、第三者に売却するためには、地主の承諾が必要であり、もし承諾が得られなければ売却が進まない可能性があります。また、買い手を見つけるまでの時間や交渉に手間がかかることもデメリットとして挙げられます。この方法では、地主との円滑な協議が重要となります。
等価交換を行い第三者に売却する
等価交換とは、借地権を第三者に売却する代わりに、その価値に見合った不動産を交換する方法です。この方法の特徴は、現金ではなく物件や土地と交換するため、資産を現物で保有し続けたい人に適している点です。
また、市場価格に左右されず、長期的に資産を保有することができます。等価交換のメリットとしては、今述べたように資産を現物で保有し続けることができるだけでなく、場合によっては税負担を軽減できる可能性があるです 。
ただし、交渉が複雑になりがちで、交換相手を見つけるのが難しいことがデメリットです。さらに将来的な市場価値の変動によるリスクも存在します。そのため、等価交換を行う際には、慎重な判断と計画が必要です。
地主の底地権と合わせて第三者に売却する
地主の底地権と借地権を一緒に第三者に売却する方法は、地主と協力して土地全体を売却する形になります。この方法の特徴は、第三者にとって土地と建物の両方を一度に取得できるため、購入意欲が高まりやすい点です。
また、借地権と底地権をセットで売ることで、個別に売るよりも高い価格が期待できます。
一方で、地主との協力が前提となり、合意を得るまでの調整が必要です。双方の権利を調整するために、売却までに時間がかかる点はデメリットでしょう。この方法を成功させるには、地主との関係を良好に保ち、双方にとって有益な条件を見つけることが重要です。
専門業者に買い取ってもらう
専門業者に借地権を買い取ってもらう方法は、迅速かつ確実に売却を完了できる手段です。この方法の特徴は、特に借地権に精通した業者に依頼することで、スムーズな取引が期待できる点です。迅速な売却が可能で、業者が購入に積極的であるため、交渉が短期間でまとまりやすいです。
また、業者に任せることで、売却手続きにかかる労力を大幅に削減できます。しかし、業者が利益を見込んで買い取るため、市場価格より低い価格での売却となる場合が多く、価格交渉が難しいことがデメリットです。
専門業者に売却を依頼する場合は、信頼できる業者を選び、事前に査定額や契約条件をよく確認することが重要です。
借地権売却の流れ

借地権を売却する際の基本的な流れは、最初に不動産会社への相談から始まり、査定や媒介契約を結びます。次に、地主の承諾を得てから売却活動を行い、売買契約を締結します。地主に承諾料を支払った後、最終的に決済を行い、借地権の引き渡しが完了します。
これらのステップを順に進めることで、スムーズな売却が可能です。
- 【借地権売却の基本的な流れ】
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- 不動産会社に相談する
- 借地権付建物を査定&媒介契約を結ぶ
- 地主の承諾を得る
- 売却活動&売買契約を結ぶ
- 地主に承諾料を支払う
- 決済・借地権の引き渡し
1.不動産会社に相談する
借地権付き建物の売却を検討する際に、まず信頼できる不動産会社に相談することが重要です。不動産会社に相談することで、売却の流れや市場価格、売却方法などの専門的なアドバイスを受けることができます。
また、借地権に関する特有の法律や手続きについても、不動産会社が適切にサポートしてくれます。ただし、借地権の売却には特殊な知識が必要であるため、借地権の取り扱いに経験のある不動産会社を選ぶことが重要です。
複数の不動産会社に相談して、条件や対応を比較することも賢明でしょう。
2.借地権付建物を査定&媒介契約を結ぶ
不動産会社に依頼して借地権付き建物の査定を行い、媒介契約を結びます。査定では、建物や借地権の価値を正確に把握し、適切な売却価格を設定します。媒介契約を結ぶことで、不動産会社が正式に売却の仲介を行うことになります。
媒介契約には「専属専任媒介」「専任媒介」「一般媒介」の3つの種類があり、それぞれに異なる特徴と制約があります。どの媒介契約を選ぶかは、売却希望者のニーズに合わせて決定する必要があります。
また、地主に買い取ってもらうことを希望している場合でも、査定を行っておくことで、地主側に選択肢を与え、交渉を有利に進められる可能性があります。
3.地主の承諾を得る
借地権を第三者に売却する際には、必ず地主の承諾を得る必要があります。このステップが借地権売却の実現を左右する最も重要な部分です。地主に売却の意図を伝え、承諾を得るための交渉を行います。交渉が円滑に進むよう、事前にしっかりと準備し、地主に対して誠実に対応することが求められます。
地主が売却に同意しない場合、売却そのものができなくなるため、このステップは特に慎重に進める必要があります。地主が承諾しない場合には、借地非訟という裁判所からの許可を得る手段もありますが、時間と費用がかかることを覚悟しなければなりません。
4.売却活動&売買契約を結ぶ
地主の承諾を得た後は、不動産会社とともに売却活動を開始し、適切な買い手を見つける段階に進みます。広告を出したり、内覧を行ったりして、物件の魅力をアピールします。
買い手が見つかったら、売買契約を結びます。この時に重要なのは、契約内容をしっかりと確認し、条件が不利にならないように注意することです。
また、契約時には手付金の受け取りなど、契約が成立することを証する行為が行われますので、しっかりと手続きを確認しましょう。売却活動中に価格交渉が入ることもありますが、事前に設定した最低価格を守りつつ、適切に対応することが求められます。
5.地主に承諾料を支払う
売却が成立した場合、借地権の譲渡に伴い、地主に承諾料を支払う必要があります。承諾料は、借地権の譲渡が地主の権利に影響を与える可能性があるため、その補償として支払われます。この金額は地主との交渉によって決まりますが、一般的には売却価格の一定割合となります。
承諾料の支払いは、売却手続きの一環として不可欠なものであり、これを怠ると取引が完了しない可能性があります。注意点として、事前に承諾料の相場や交渉のポイントを調べ、適切な金額を提示できるよう準備しておくことが大切です。
6.決済・借地権の引き渡し
最後のステップでは、買い手からの支払いを受け、借地権の引き渡しを行います。この決済段階では、売却代金の受け取り、残りの借地権料や税金の精算が行われます。また、法務局での名義変更手続きも並行して進められます。決済が完了すると、正式に借地権の引き渡しが行われ、売却手続きが完了します。
重要な点は、決済日に向けて必要な書類を全て揃え、手続きがスムーズに進むよう準備を整えておくことです。特に、名義変更手続きに必要な書類が不備なく揃っていることを確認し、安心して取引を完了させましょう。
借地権の相続時に発生しやすいトラブルの事例

借地権を相続する際には、さまざまなトラブルが発生することがあります。
- 相続時に借地の返還を求められる
- 相続時に名義変更料を請求される
- 借地権の相続税が払えない
- 共有名義で借地を相続した
- 借地に建てた家の登記をしていない
- 相続した借地権を返還したいが解体費が払えない
以下では、これらの代表的なトラブルとその対処法について詳しく解説します。
相続時に借地の返還を求められる
相続時に借地の返還を求められるケースは、地主が相続人に対して土地の返還を強く要求する場合に発生します。このトラブルは、地主が土地を別の目的で使用したい場合や、借地契約の継続に同意しない場合に起こりやすいです。
返還要求に対しては、まずは借地契約の内容を確認し、返還義務があるかどうかを判断することが重要です。返還義務がない場合には、法的に対抗することが可能ですが、地主との関係が悪化しないよう、交渉により解決することが望ましいです。
相続時に名義変更料を請求される
相続時に、地主から名義変更料を請求されるケースも少なくありません。このトラブルは、借地権の名義変更を行う際に、地主が名義変更に対する承諾料として費用を請求することが原因です。
名義変更料の請求が妥当かどうかを判断するためには、借地契約や法的規定を確認することが必要です。もし過剰な請求であると判断される場合には、交渉を通じて適正な額に調整するか、法的な助言を求めることが適切です。
借地権の相続税が払えない
借地権を相続する際、その相続税が高額になることがあり、支払いが困難になるケースがあります。借地権の相続税は、相続税路線価を基に評価され、そこに借地権割合が適用されて算出されます。
この評価額が高くなると、相続税の支払いが厳しくなる可能性があります。有効な対処法は、相続財産全体の見直しを行い、必要であれば分割払いの申請や物納を検討することです。専門家に相談して、最適な方法を選択しましょう。
共有名義で借地を相続した
借地権を複数の相続人が共有名義で相続すると、物件の管理や処分においてトラブルが発生することがあります。例えば、売却や賃貸の際に全員の同意が必要となるため、意見が一致しない場合に問題が生じやすいです。
このような状況では、相続人の間での話し合いが不可欠です。また、共有名義の解消を検討することも一つの方法であり、持ち分の売却や交換、相続分の譲渡などを行うことでトラブルを回避することが可能です。
借地に建てた家の登記をしていない
借地に建てた家が未登記である場合、相続時にトラブルとなることがあります。未登記の建物は法的に所有権が確立していないため、相続手続きが複雑になりがちです。
この場合、まずは建物の登記を行い、法的な所有権を明確にすることが必要です。登記を行うことで、相続手続きがスムーズに進み、後々のトラブルを避けることができます。
相続した借地権を返還したいが解体費が払えない
相続した借地権を返還したいが、建物の解体費用が支払えないケースも存在します。借地権の返還には、更地にして地主に返す義務があるため、建物を解体する費用が必要です。
解体費用が高額になる場合、相続人がその負担に耐えられないことがあります。このような場合には、自治体の助成金を活用できる可能性があるため、まずは自治体に相談することが推奨されます。また、費用を抑えるために複数の解体業者から見積もりを取ることも有効です。
まとめ
この記事では、相続した借地権の売却方法や、相続時に発生しやすいトラブルについて詳しく解説しています。地主への売却、第三者への売却、等価交換、専門業者への売却など、さまざまな選択肢がある中で、地主の承諾が重要であることを強調しています。
また、相続時には返還要求や名義変更料、相続税の支払い困難、共有名義によるトラブルが発生しやすいため、適切な対応が必要です。
訳あり物件買取センターの専門家に相談することで、これらの複雑な手続きやトラブルをスムーズに解決し、安心して資産を管理・処分することができます。