借地権の更新料は、多くの借地権者にとって重要な問題です。この記事では、更新料の法的位置づけや支払い義務の有無、相場と計算方法、更新手続きの流れなどを詳しく解説します。
また、更新料に関するトラブル事例や支払いが困難な場合の対処法など、借地権者が直面する可能性のある事柄についても紹介します。借地権の更新に関する疑問や不安を解消するためにも、ぜひ参考にしてください。
目次
借地権の更新料には支払い義務がある?

借地権とは、借りた土地のうえに建物を建てるための土地賃貸契約です。契約によっては30年以上といった長い年数、土地を借りられます。ただし、更新の際には更新料が求められるケースがあります。
借地権の更新料について、まずは法的な内容を理解しましょう。前提として、借地権は大きく分けて旧法借地権と新法借地権があります。そして、新法借地権の中でも普通借地権と定期借地権があります。

定期借地権では更新自体が想定されていませんが、旧借地権や普通借地権(新法)では更新が可能です。
なお、新法借地権では、更新時に更新料を支払う法的な義務は明確には規定されていません。しかし、実際には多くの場合、長年の慣習から更新料が発生しているのが現状です。地主との良好な関係を維持し、土地の利用をスムーズに継続するための費用とも捉えられています。
特に以下のようなケースでは、更新料の支払いが推奨されます。
- 【更新料を支払うべきケース】
-
- 契約書に更新料や手数料の支払いが明記されている
- 双方が支払いに合意した
- 過去にも更新料を支払ったことがある
更新料の支払いには厳密な法的義務はありませんが、契約の安定性を保ち、借地権者の土地利用の自由度を確保するための重要な要素となっています。
借地権の更新料の相場と計算方法

借地権の更新料がかかる場合、いくらの費用がかかるのか気になる方も多いでしょう。更新料は、地域や地主によって大きく異なりますが、一般的には借地権価格の3〜10%程度が目安と言われています。
借地権価格とは、借地権の評価額のことです。対象の土地の更地価格に借地権割合を乗じて算出します。借地権割合は土地によって決められており、国税庁の財産評価基準書路線価図・評価倍率表で確認できます。
具体的な計算例を見てみましょう。
- 借地権更新料の計算方法と目安
-
- 路線価:1㎡あたり10万円
- 土地の面積:100平方メートル
- 借地権割合:60%
- 借地権価格:600万円
- 更新料相場:18万〜60万円程度
ただし、これはあくまで一般的な目安であり、実際の更新料は個々の契約条件や地域の慣習、借地権者と地主との交渉によって決まります。地主との良好な関係を維持しつつ、自身の権利も適切に主張できるよう、慎重に交渉を進めることが大切です。
借地権更新料の手続きは2パターン

借地権の更新手続きには、主に「法定更新」と「合意更新」の2つのパターンがあります。
- 法定更新:契約更新しない旨の通知をしない限り、従前と同じ条件で契約を更新したとみなされる
- 合意更新:借地権者と地主の双方が協議し、新たな契約内容を決定して更新する
法定更新では、特に手続きを行わなくても自動的に契約が更新されるため、借地権者にとっては安定した土地利用が保証されます。一方、合意更新では、双方の協議によって契約内容を決定するため、時代や状況の変化に応じた柔軟な契約更新が可能です。
現在は、合意更新の方が一般的となっています。長期にわたる借地関係において、社会経済状況の変化に対応し、双方にとって適切な条件を再設定できるためです。また、更新料の支払いについても通常、合意更新の際に協議されます。
借地権更新料の支払いについては、法律で定められた期限はありません。具体的な支払い時期や方法は、借地権者と地主との間で決定しますが、以下のようなパターンが通例です。
- 更新日前に一括で支払う
- 更新の翌月に地代と一緒に支払う
期日前に支払えない場合は、地主と分割払い等の方法を協議する必要があります。
借地権の更新料に関するトラブル事例

借地権の更新料をめぐっては、様々なトラブルが発生することがあります。ここからは、トラブル化しやすい3つの事例を紹介します。
- 借地権の更新料が高すぎる
- 更新料の額に合意できず更新拒否をされた
- 更新料の受け取りを拒否し返還を要求された
それぞれの事例について、問題の背景や解決のヒントを見ていきましょう。
借地権の更新料が高すぎる
地主が相場を大きく上回る更新料を要求してくる場合があります。借地権の更新料が法外に高い場合、借地権者は以下のように対応しましょう。
- 更新料が不当であることを地主に申し出る
- 客観的な視点から更新料の妥当性を確認する
- 値下げ交渉を行う
ただし、地主とのトラブルは長期的な関係に悪影響を及ぼす可能性があるため、真摯な対話を心がける必要があります。
必要に応じて、不動産鑑定士や弁護士などの専門家に依頼し、客観的な視点から更新料の妥当性を評価しましょう。これにより、感情的な対立を避け、より合理的な結論に達する可能性が高まります。
更新料の額に合意できず更新拒否をされた
借地権の更新料には法的な支払い義務はありませんが、契約の更新には借地権者と地主双方の合意が必要です。地主の合意がなければ更新はできませんが、同時に地主も更新料を理由に一方的に更新を拒否したり、法外な更新料を強要したりできるものではありません。
そのため、最終的にはしっかりとした交渉を通じて、お互いに納得できる形に持っていく必要があります。話し合いだけで解決するのが難しい場合は、不動産鑑定士や弁護士などの専門家に仲介を依頼することも有効です。
更新料の受け取りを拒否し返還を要求された
更新料の支払いを申し出たにもかかわらず、地主がその受け取りを拒否し、さらに返還を要求するケースがあります。このような状況で借地権者が取れる対応の一つが「供託」という方法です。
供託とは、金銭や有価証券などを国(法務局)に預けることで、債務の弁済や義務の履行をしたとみなす制度です。法的紛争の際に、誠実に対応した証拠となり、更新料をめぐるトラブルの長期化を防げます。
借地権更新料の場合、供託の手順は以下の通りです。
- 最寄りの供託所に供託の申請を行う
- 供託所の指示に従い、供託金を納付する
- 供託が受理されると、供託書正本が発行される
- 地主に供託した旨を通知する(内容証明郵便推奨)
ただし、供託は最終手段であり、まずは地主との話し合いや専門家を交えた交渉を行うことが重要です。
借地権の更新料が支払えない場合はどうなる?

借地権の更新料が支払えない場合、多くの借地権者は不安を感じるでしょう。ここでは、更新料が支払えない場合の重要なポイントを2つ解説します。
- 直ちに契約解除・立ち退き要求されるわけではない
- 借地権を売却するという選択肢もある
それぞれについて見ていきましょう。
直ちに契約解除・立ち退き要求されるわけではない
借地権の更新料の支払いには法的な義務がないため、支払えない場合でも、直ちに契約解除や立ち退きを要求されるわけではありません。しかし、支払いが困難な場合は、早めに以下のような対応をしましょう。
- 地主に状況を説明し、支払い期限の延長を相談する
- 分割払いの可能性について協議する
- 一時的な減額や猶予期間の設定を提案する
早めに地主とコミュニケーションを取ることで、心証を悪くせず、互いに納得できる解決策を見出せる可能性が高まります。
ただし、契約書に更新料の支払いが明確に規定されている場合、更新料の不払いは契約違反となります。状況次第では、契約解除につながる可能性があるので注意しましょう。契約内容を十分に確認し、必要に応じて法律の専門家に相談しながら、適切な対応を取ることが重要です。
借地権を売却するという選択肢もある
借地権の更新料が支払えない場合、借地権を売却するという選択肢もあります。借地権の売却とは、借地権者が自身の「建物を所有する目的で土地を借りる権利」を第三者に譲渡することです。新しい所有者が借地権者となり、地主との契約関係を引き継ぎます。
しかし、借地権の売却には、原則として地主の承諾が必要です。また、別途譲渡承諾料が必要になる場合もあるため、事前に契約内容を確認しておきましょう。
まとめ
借地権の更新料は、法的義務はないものの、慣習的に支払われることが多い費用です。相場や計算方法、更新手続きの流れを理解し、トラブルに備えることが大切です。
なお、更新料が支払えない場合でも、直ちに契約解除されるわけではありません。地主との交渉や専門家の助言を得ながら、適切な対応を取ることが重要です。状況によっては、借地権の売却も視野に入れて検討しましょう。
ただし、借地権は不動産の中でも権利関係が複雑で、通常の不動産よりも売却の難易度が高いのが特徴です。そのため、借地権の取引実績が豊富な不動産会社に相談する必要があります。訳あり物件買取センターは、不動産の複雑な問題に精通し、お客様の大切な資産を最大限に活かすための最適な解決策をご提供します。専門知識と経験を活かし、スムーズで円満な取引をサポートしますので、安心してご相談ください。