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借地権付き建物って何?メリット・デメリットについて解説!

借地権付き建物とはどのような物件かご存じでしょうか。近年では借地権付き分譲住宅・分譲マンション・ロードサイド収益物件などが売りに出るようになりました。 借地権付き建物は安く購入できるなどのメリットがある反面、銀行の融資が…

この記事の監修者
  • 虎ノ門桜法律事務所 / 代表弁護士
    伊澤 大輔
    経歴:
    2001年弁護士登録。虎ノ門桜法律事務所代表弁護士。
    不動産会社(売買、賃貸、仲介、管理、共有物分割、競売等)等、顧問先多数。
    元暴力団追放運動推進都民センター相談委員、同センター不当要求防止責任者講習講師。
  • 宅地建物取引士
    鈴木 成三郎
    経歴:
    2013年より不動産業に従事。2019年に宅地建物取引士を取得。
    借地権のスペシャリスト。
    借地権にとどまらず、事故物件、収益ビル、倉庫、アパート等、各種不動産売買に精通している。
    趣味は仕事。年間取引数は70件に及ぶ。

借地権付き建物とはどのような物件かご存じでしょうか。
近年では借地権付き分譲住宅・分譲マンション・ロードサイド収益物件などが売りに出るようになりました。

借地権付き建物は安く購入できるなどのメリットがある反面、銀行の融資が受けにくいなどのデメリットもあります。

本記事では、「借地権付き建物」について詳しく解説し、メリット・デメリットも紹介しますので、借地権付き建物を買おうと考えている方はぜひ参考にしてください。

借地権付き建物の概要

借地権付き建物のことを知るためには、次の項目を理解する必要があります。

  • 借りた土地の上に建つ建物のこと
  • 地主は相続税評価額が抑えられる

借地権付き建物には、通常の物件と異なる点がいくつかあります。
通常の物件と異なる点や特徴を解説していきますので、借地権付き建物のことを詳しく知りたいという人はぜひ参考にしてください。

借りた土地の上に建つ建物のこと

借地権付き建物とは、借りた土地に建つ建物のことです。
つまり、建物は所有している状態ですが、土地は借りている状態ということです。

建物を所有しているため建物の固定資産税は課税されますが、土地は所有していないため土地の固定資産税は課税されません。

また、借地権とは、建物を建てる目的で土地を借りたときに付与される権利で、土地を借りるために借地人は地代を払わなければいけません。
そして、借地権にはさまざまな種類があり、借地期間を更新し続けられるものや、更新できず一定期間しか土地を借りられないものもあります。

借地権付き建物を所有している限り借地権が発生し続けるため、地代を払い続けなければいけません。

土地の固定資産税は払わなくてよいものの、代わりに毎月の地代が発生するということです。

地主は相続税評価額が抑えられる

借地権を設定すると、地主は相続税評価額を抑えることができます。

相続税評価額とは、相続税の税額を計算するときに利用される数値であり、一般的には土地の面積に路線価を乗ずることで計算します。
相続税評価額が抑えられれば、相続税の課税額を減らすことが可能です。

土地は借地権を設定することで、借地権割合が認められます。
借地権割合は相続税評価額を抑える効果があります。

さきほど、相続税評価額を計算するときには、土地の面積に路線価を乗じて計算すると解説しました。
借地権割合が認められると、計算式が次のように変化します。

借地権が設定された土地の相続税評価額 = 土地の面積 × 路線価 × (1 – 借地権割合)

借地権割合は、地域ごとに30%〜90%という数字が決められています。

借地権割合で相続税評価額がどのくらい抑えられるのか、シミュレーションしてみましょう。

【シミュレーション条件】

  • 借地権が設定された土地の面積:500㎡
  • 路線価:10万円/㎡
  • 借地権割合:30%

【計算式】
500㎡ × 10万円/㎡ × (1 – 0.3(30%)) = 3,500万円(借地権が設定された土地の相続税評価額)

もしこのシミュレーション条件で借地権が設定されていないとしたら、相続税評価額は5,000万円です。
借地権が設定されているだけで、相続税評価額が1,500万円も抑えられています。
借地権の設定が相続税対策になるといわれている理由の1つが借地権割合です。

また、借地権を設定していれば地代が手に入り、毎月の収入になります。
借地権は数十年間土地を貸すことになるため、長期的に安定した収入を得ることが可能です。

借地権付き建物を所有するメリットは?

借地権付き建物を所有するメリットは、次のとおりです。

  • 安く物件が購入できる
  • 税負担が軽い
  • 長期的に借りられる

借地権付き建物は、通常の不動産と異なる特徴を持っています。
この特徴が、借地権付き建物を所有するメリットになるケースもあります。
所有することにどのようなメリットがあるのか紹介しますので、借地権付き建物を購入・相続する人はぜひ参考にしてください。

安く物件が購入できる

借地権付き建物は、通常の土地付き建物よりも安く購入できます。

借地権付き建物を購入するときには、土地を購入する必要がありません。
土地の購入代金は高いため、購入総額を大きく減らすことが可能です。

購入総額が減れば購入諸経費も減るため、大きくコストを抑えられます。
不動産会社に支払う仲介手数料は、次の表のように売買金額によって手数料額が変動します。

仲介手数料の速算式計算式の利用条件
仲介手数料 = 売買金額 × 3% + 6万円売買金額が400万円を超える場合
仲介手数料 = 売買金額 × 4% + 2万円売買金額が200万円を超え400万円以下の場合
仲介手数料 = 売買金額 × 5%売買金額が200万円以下の場合

物件金額に5,000万円の差がつくと約150万円ほど、仲介手数料の額が変わるため大きなコストダウンが図れます。

税負担が軽い

借地権付き建物を所有した場合、建物の固定資産税を納税する必要はあるものの、土地の固定資産税は納税しません。
土地は借りているだけであり、所有していないからです。

そして、借地権付き建物が都市計画税の課税される地域にある場合、固定資産税と同じく土地の都市計画税は発生しません。

また、借地権付き建物を購入した場合、印紙税・登録免許税・不動産取得税といった購入時に課税される税金の節税にもなります。

印紙税は不動産の売買価格が高くなると納税額が増え、登録免許税や不動産取得税は取得する不動産の評価額が高いほど高額になります。

土地を購入しなければ購入金額・取得する不動産の評価額も下がるため、土地付き建物を購入するよりも税額が減り節税をすることが可能です。

長期的に借りられる

借地権の存続期間は長く、長期的に土地を借りて建物を運用できます。
借地権の存続期間は最低でも30年です。
しかも、更新するときに初回更新なら20年、2回目以降の更新なら10年の存続期間の延長が認められています。

土地を長い間借りられれば、借地人は土地を計画的に利用できます。
短期間の計画であれば大規模投資をするのは難しいですが、長期的な計画であれば綿密な計画が立てられて大きな金額を投資してリターンを得ることが可能です。

また、借地権は地主・借地人ともに原則、借地権の存続期間中の解約ができません。
そのため、正当事由がないと解約できないため、大規模投資をしても安心して計画を進めていくことができます。

なお、正当な事由とは借地人が地代を長期間滞納した、借地上の建物が滅失したなどです。
「借地権設定契約を解除したい」というような一方的な解約は、地主・借地人にともに認められません。

借地権付き建物を所有するデメリットは?

借地権付き建物を所有するデメリットは、次のとおりです。

  • 毎月地代を支払う必要があ
  • 大規模修繕の際には地主の許可がいる
  • 銀行の融資を受けるのが厳しくなる

借地権付き建物を所有するメリットは多いですが、デメリットも存在します。
借地権付き建物を所有するときにはデメリットを把握し、対策しつつ所有していきましょう。

毎月地代を支払う必要がある

借地権付き建物を所有すると、毎月地代を払わなければいけません。

地代は毎月発生するものの、代わりに土地の固定資産税や都市計画税は課税されません。
地代は、相場や地主の地代に対する考えで金額が異なるため、年間の地代が土地の固定資産税・都市計画税と比べ安いのかどうか調査しておくとよいでしょう。

ただし、年間の地代が土地の固定資産税・都市計画税より高かったとしても、土地を購入しなくてもよいため、大きなコストカットになることには違いありません。

大規模修繕の際には地主の許可がいる

借地権付き建物を増改築するなどの大幅なリフォームをするときには、地主の承諾が必要になります。

建築基準法上では、一定面積以下の増改築は申請しなくてもよいとされていますが、地主に対してはどのような条件でも増改築をするのであれば承諾を取らなければいけません。
あくまで増改築であるため、建物の維持修繕を目的とするリフォームであれば地主の承諾は不要です。
ただし、借地借家法が適用され増改築禁止特約を付していない場合、設定契約から更新する前までであれば建物の増改築に地主の承諾は不要です。

更新後からは増改築禁止特約が付いていなくても、地主の承諾が必要になります。
また、旧借地法が適用される借地権であれば、増改築禁止特約が付いていなくても設定契約時から地主の承諾を得なければいけません。

地主の承諾を得ずに勝手に増改築した場合、借地権設定契約の解除を求められる可能性があるため注意しましょう。

銀行の融資を受けるのが厳しくなる

借地権付き建物を購入する際には、銀行からの融資を受けにくくなります。
銀行は担保評価を見て融資をします。
借地権付き建物は土地が他人のものであり、担保としてみることができません。
さらに、建物は借地権が解除されたときに利用できなくなるため、建物も担保として考えると弱い財産です。

借地権付き建物は担保評価がしにくい物件であるため、銀行は融資に消極的になってしまいます。
そのため、融資を受けて購入することを検討している場合、借地権付き建物に対して融資を積極的におこなっている銀行に相談することが大切です。

借地権付き建物を売却する方法は?

借地権付き建物を売却する方法は、次のとおりです。

  • 借地権を地主に買い取ってもらう
  • 第三者に売却する

借地権付き建物は、通常の不動産に比べ売却しにくいため、売る方法を理解して進めて行く必要があります。
売る方法を理解していれば、借地権付き建物の売却もスムーズに進むことでしょう。

借地権を地主に買い取ってもらう

借地権付き建物の売却を検討するときには、地主に買い取ってもらえないか相談しましょう。

地主によっては「土地を返還してほしいが、借地権の土地は途中解約できないから困った。」と考えている人もいます。
もし返還してほしいと考えている地主であれば、借地権と建物を買い取ってくれるかもしれません。

借地権付き建物を買い取ってもらえれば、借地権だけでなく建物の処分もおこなえます。
しかも、地主に借地権付き建物を買い取ってもらった場合、借地権を移転するときに必要な譲渡承諾料もかかりません。

借地権付き建物を売却するときには、費用も抑えられる地主への買い取り相談を必ずおこなうようにしましょう。
あらかじめ相談をしておけば地主が買い取りしてくれなくても、第三者に売るときの承諾が得やすくなります。

第三者に売却する

地主が買い取ってくれない場合は、借地権付き建物を第三者に売却しましょう。
借地権付き建物を第三者に売却するときには、地主の許可が必要です。
買い手に迷惑を掛けないよう、借地権付き建物を第三者に売却することをあらかじめ地主に相談しておくことが大切です。

地主に相談するときには、譲渡承諾料についても打ち合わせしておかなければいけません。
借地権を第三者に譲渡する場合、借地権価格の10%程度を地主に払います。
しかし、この金額は目安であり、地主の考え方によって金額は異なるため注意しましょう。

いくら譲渡承諾料を払えば承諾してくれるのかを明確にしておけば、借地権付き建物の購入を検討している人も安心して資金計画が立てられます。

なお、売却先は一般の人だけではなく、不動産会社でもかまいません。
借地権付き建物は一般の人に対してなかなか売れないため、不動産会社の買い取りを利用するとよいでしょう。
先述したとおり借地権付き建物は融資が受けにくく、リフォームの許可が必要であるなど特殊性が高い物件です。
一般の人を相手に売り出すよりも、不動産会社に買い取り相談をしたほうが早く売却できることでしょう。

借地権付き建物にはメリットはあるが売却のことも考えておくことが大事

借地権付き建物とは、土地を借りて建物を建てた物件です。

借地権付き建物は、安く購入でき長期間運用できるメリットがあります。
しかし、なかなか銀行の融資が受けにくい、地主の承諾がないと増改築や売却ができないデメリットもあります。

借地権付き建物を購入するときには、メリットとデメリットを理解したうえで進めていくことが大切です。
メリットとデメリットをしっかり理解していれば、借地権付き建物を活かしていくことができます。
そして、もし売却することがあったとしても対策ができ、スムーズに売却を進めていくことも可能です。

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